茶室は、喧騒から切り離されたもうひとつの時間が流れる場所。
その場に身を置くことで、人は自ずと呼吸を整え、感覚を研ぎ澄まされていく。
本展「静謐の間(あわい)」では、私、小笠原敏孝が25年にわたり撮り続けて
きた茶の湯の世界、とりわけ裏千家・今日庵の茶室空間を中心に、その精神と
佇まいを見つめた作品を展示します。
私がファインダー越しに感じたのは、ただ目に映る造形ではありません。
光の移ろい、影のたたずまい、時間が静かに積もるような感覚。
それらの交わる"間(あわい)"に宿る気配を写し取りたいと願ってきました。
写真というかたちを借りながら、私自身の眼差しを通して感じた静けさを、
皆さまにそっと手渡すような展示になればと願っています。
それぞれの内にある静謐と呼応するひとときとなれば幸いです。